解決事例2.共有不動産対策として収益不動産を信託【民事信託】

2.共有不動産対策として収益不動産を信託【民事信託】

状況

  1. Aさん(女性、80代)は、弟のBさん(70代)とCさん(70代)と3人で父から収益不動産を相続して、それぞれ持分3分の1ずつで共有しています。
  2. 将来、売却や大規模修繕等も検討していますが、3人とも高齢なのでもし誰かが認知症になってしまったり、死亡して相続が発生したりした場合に備えておきたいので、何か良い方法はないかというご相談でした。

司法書士の提案&お手伝い

  1. まず、このまま何もしなかったとすると、3人のうちの誰かが認知症等で判断能力が衰えてしまうと、不動産の売却や大規模修繕等を行うことができなくなってしまうリスクがあることを説明させていただきました。そのような状況になってしまうと、成年後見制度を利用するしかありませんが、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見開始の申し立てをしなければならず、誰が成年後見人に選ばれるかどうか分からず、選任された成年後見人が親族の意向に沿って動いてくれるかどうか分からない、第三者の専門職が成年後見人に選ばれるとその報酬が発生するといった制約もあることを説明させていただきました。
  2. また、3人のうちの誰かに相続が発生すると、その相続人が共有者となるので、相続人が複数いる場合には遺産分割の内容によっては持分がさらに細分化してしまうことを説明させていただきました。
  3. そこで、3人とも高齢とはいえ、幸い判断能力はまだ大丈夫なので、元気なうちに委託者兼受益者をAさん、Bさん、Cさん、受託者をAさんの長男Dさんとする信託契約をそれぞれ締結しておけば、仮に3人のうちの誰かの判断能力が衰えていたとしても、Dさんの判断で管理・処分をすることができることから、民事信託の活用を提案させていただきました。
  4. また、仮に3人のうちの誰かに相続が発生したとしても、管理・処分はDさんの判断で行いながら、受益権という形で相続してもらうことにより相続人に対して収益の分配を行うことができます。

結果

  1. Aさん、Bさん、Cさん、Dさんに事務所にお越しいただき打ち合わせをさせていただいた結果、次の信託スキームで手続きを進めることとなりました。

    信託契約①

    委託者 Aさん
    受託者 Dさん
    後任受託者 Dさんの長男
    当初受益者 Aさん
    第二次受益者 Aさんの相続人
    信託監督人 司法書士
    信託財産 収益不動産の持分
    帰属権利者 信託終了時の受益者

    信託契約②

    委託者 Bさん
    受託者 Dさん
    後任受託者 Dさんの長男
    当初受益者 Bさん
    第二次受益者 Bさんの相続人
    信託監督人 司法書士
    信託財産 収益不動産の持分
    帰属権利者 信託終了時の受益者

    信託契約③

    委託者 Cさん
    受託者 Dさん
    後任受託者 Dさんの長男
    当初受益者 Cさん
    第二次受益者 Cさんの相続人
    信託監督人 司法書士
    信託財産 収益不動産の持分
    帰属権利者 信託終了時の受益者
  2. 4人の印鑑証明書をご用意いただき、当事務所で信託不動産の登記情報と固定資産評価証明書を取得させていただきました。
  3. 当事務所で信託契約書の案を作成し、公証役場と事前の打ち合わせ等、信託契約を公正証書で作成する準備をさせていただきました。当事者全員にも契約書の最終案を確認いただき内容を確定し、公正証書を作成する日時を決めさせていただきました。また、不動産については登記が必要となるため、登記申請に必要な書類を作成させていただきました。
  4. 4人で公証役場に一緒に行かせていただき、信託契約を公正証書で作成しました。また、登記手続に必要な書類に押印いただき、委託者であるAさんから受託者であるDさん(信託契約①)、委託者であるBさんから受託者であるDさん(信託契約②)、委託者であるCさんから受託者であるDさん(信託契約③)への所有権移転及び信託の登記手続を行いました。
  5. 登記が完了し、登記識別情報等の完了書類を受託者にお渡しさせていただきました。また、金銭については受託者個人の財産とは分別できるDさん名義の信託財産管理用の口座を開設していただき、Aさん、Bさん、Cさんから信託する金銭を移転してもらう手続きをサポートさせていただきました。
  6. 賃料収入等の管理をサポートするため、当事務所の司法書士が信託監督人に就任させていただき、引き続きサポートさせていただいております。