解決事例1.高齢の父親の認知症に備えて自宅不動産を信託【民事信託】

1.高齢の父親の認知症に備えて自宅不動産を信託【民事信託】

状況

  1. Aさん(男性、50代)は、現在実家で一人暮らしをしている父親のBさん(80代)が最近物忘れも多くなっており、将来認知症になってしまった場合に備えた対策についてご相談に来られました。
  2. 近い将来、一人暮らしが困難となり、介護施設に入所しなければならない場合に、空き家となる自宅を売却して入所費用に充てることも考えていますが、本人の判断能力が衰えてしまっていると、不動産の売却をすることが難しくなるというが、どうしたらいいかとの相談でした。

司法書士の提案&お手伝い

  1. まず、このまま何も対策をしなかったとすると、介護施設に入所し自宅を売却する時点でBさんの判断能力が衰えている場合は、成年後見制度を利用しなければならないこと、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見開始の申し立てをしなければならず、自宅を売却するためには居住用不動産の売却について家庭裁判所の許可が必要であることを説明しました。また、誰が成年後見人に選ばれるかどうか分からず、選任された成年後見人が親族の意向に沿って動いてくれるかどうか分からない、第三者の専門職が成年後見人に選ばれるとその報酬が発生するといった制約もあることを説明しました。
  2. Bさんは高齢で物忘れも多くなっているとはいえ、幸い判断能力はまだ大丈夫なので、元気なうちに委託者兼受益者をBさん、受託者をAさんとする信託契約を締結しておけば、不動産を売却する必要が生じた時点で仮にBさんの判断能力が衰えていたとしても、Aさんの判断で売却することができることから、民事信託の活用を提案させていただきました。

結果

  1. AさんとBさん2人で事務所にお越しいただき打ち合わせをさせていただいた結果、次の信託スキームで手続きを進めることとなりました。
    委託者 Bさん(父)
    受託者 Aさん(子)
    受益者 Bさん(父)
    信託財産 自宅不動産と金銭
    帰属権利者 Aさん(子)
  2. AさんとBさんの印鑑証明書をご用意いただき、当事務所で信託不動産の登記情報と固定資産評価証明書を取得させていただきました。
  3. 当事務所で信託契約書の案を作成し、公証役場と事前の打ち合わせ等、信託契約を公正証書で作成する準備をさせていただきました。AさんとBさんにも契約書の最終案を確認いただき内容を確定し、公正証書を作成する日時を決めさせていただきました。また、不動産については登記が必要となるため、登記申請に必要な書類を作成させていただきました。
  4. AさんとBさんと公証役場に一緒に行かせていただき、信託契約を公正証書で作成しました。また、登記手続に必要な書類に押印いただき、委託者であるBさんから受託者であるAさんへの所有権移転及び信託の登記手続を行いました。
  5. 登記が完了し、登記識別情報等の完了書類を受託者にお渡しさせていただきました。また、金銭については受託者個人の財産とは分別できるAさん名義の信託財産管理用の口座を開設していただき、Bさんから信託する金銭を移転してもらう手続きをサポートさせていただきました。将来、不動産の売却が必要となった場合は、また連絡いただくようにお伝えし、業務は終了しました。